日本技術士会東北本部

文責 : 東北本部技術士 佐藤

557.南部鉄びん

 南部鉄びんの本体部は鉄鋳物である。砂型である鋳型に、溶けた高温の鉄を流し込んでつくる。南部鉄びんは茶釜が発祥で、その歴史は平安時代に京都の鋳物師を招いたことから始まる。地元には良質の砂鉄があり鋳型に適した粘土や砂もあったことから、南部藩が奨励した。南部鉄びん作りでは「うるし」が欠かせない。岩手は良質なうるしの産地でもある。うるしは熱にもサビにも強い。南部鉄びん特有の工程のひとつが「釜焼き」である。800℃の炭火の中に鉄びんを入れて熱することで、酸化被膜をつくる。二つ目はうるしによる着色である。300℃に熱して本うるしを塗る。ただこれでは光沢があるので、次に「おはぐろ」という液体を熱いうちに塗り込む。鉄さびとお茶の汁を混ぜたもの。こうして使い込んだような風合いを出す。南部鉄びんの取っての部分は「つる」と呼び、専門の鍛冶屋がつくる。切断した鉄板を加熱しながら叩いて丸めて、中空の湾曲した棒状体をつくりだす。