日本技術士会東北本部

文責 : 東北本部技術士 佐藤

807.ノーベル化学賞は予想通り二人の女性に

 今年のノーベル化学賞は、ゲノム編集の新たな技術を開発した二人の女性に決まった。生命の情報を自由に書き換える画期的な技術で、ノーベル賞受賞は確実と以前から言われていた。フランス出身のシャルパンティエ氏とアメリカのダウドナ氏である。2人は「細菌」の免疫の仕組みを利用して、ゲノムと呼ばれる生物の遺伝情報の狙った部分を極めて正確に切断したり、切断したところに別の遺伝情報を組み入れたりすることができる「CRISPR-Cas9」(クリスパー・キャスナイン)と呼ばれる「ゲノム編集」の画期的な手法を開発したことが評価された。それまであった「ゲノム編集」の方法に比べて簡単で効率がよく、より自在に遺伝情報を書き換えることができることから、すでに作物の品種改良などのほか、がんの新しい治療法の開発や新型コロナウイルスの研究にも用いられている。2012年の発表以降世界中で普及している。この技術で狙ったとおりに遺伝子を切断したり挿入したりすることができるようになったのである。しかしこの技術により例えば親が望む特徴を持った赤ちゃん「デザイナーベビー」をつくることも可能になり、遺伝子操作のリスクも抱えている。それにしても人類は、遺伝情報を自由に書き換えることまでやるようになるとは。