日本技術士会東北本部

文責 : 東北本部技術士 佐藤

616.原稿用紙

 京都の黄ばく宗大本山萬福寺の収蔵庫には、棚にずらりと黒い板が並ぶ。その数6万枚、これらは全てお経の版木である。今もその版木を用いて大般若経の木版印刷が行われている。これらの版木は、300年以上前の江戸時代に鉄眼禅師が製作したという。印刷されたお経は、つなげられて経本となり法要などで使われる。この木版印刷お経が、実は「原稿用紙」の原型である。20字10行を左右2面にした書式のお経は、かつて大量に印刷されて全国のお寺に普及した。明治に入り尾崎紅葉が、この20字10行を左右2面にしたマス目を入れた原稿の用紙を文房具店に注文した。同じ用紙は夏目漱石や石川啄木ら多くの文豪も使用し、世に広まって小中学校で作文用の原稿用紙となった。現在の原稿用紙には中央の空間上下にマークがある。本来ここにはお経の題名とページ数を書いたその名残である。こうした原稿用紙を現代の作家たちは用いないだろう。最近あまり見かけないが今も学校の作文では使っているのだろうか。