日本技術士会東北本部

文責 : 東北本部技術士 佐藤

583.東洲斎写楽

 江戸の浮世絵師である東洲斎写楽は「なぞの人」だ。江戸時代、役者や関取の絵を描いた浮世絵は大変人気があった。今でいうブロマイドであり美化して描くのが通常だった。そんな1794年に突如、無名新人の浮世絵が、人気版元であった蔦屋から発売された。それもデビュー作で一度に28枚を一挙に出版した。それまでの役者浮世絵とは異なり、上半身だけを描いた「大首絵」で役者を美化することがなかった。背景には黒雲母が使われた。作者は東洲斎写楽。だがこの新しい浮世絵は庶民に受け入れられなかった。異端の一発屋だった。合計で100枚余の浮世絵を描いたが、デビューからわずか10か月で姿を消した。この写楽が何者であったのかはわかっていない。八丁堀に住む能役者だったという説が有力。100年後になってヨーロッパで、写楽の浮世絵が高い評価を受けることになった。2019.07.03