日本技術士会東北本部

文責 : 東北本部技術士 佐藤

743.法隆寺金堂の壁画

 世界遺産「法隆寺」の金堂では、仏像たちの周囲を高さ3mという大きな壁画が囲んでいる。「金堂壁画」と呼ばれる12面の仏教絵画である。実は過去に多くの画家たちが模写を描いてきた。その金堂で、昭和24年1月に出火し、壁画は焼損し無残な姿になった。原因は模写作業中の暖房消し忘れとされた。当時仏像は別の場所にあって無事だった。明治時代には絵師桜井香雲がシミもキズもそのままに12面を2年かけて模写した。大正時代には、仏画に人生を捧げた鈴木空如が12面を実物大で3回模写した。彼らは暗い中でろうそくの灯を頼りに描いた。昭和15年になって模写事業が始まった。このときは初めて蛍光灯が使われた。だが戦争で中断する。昭和42年になって壁画再生プロジェクトがスタートする。42分割のガラス乾板写真があったので、それを用いて日本画家たちが壁画再生に取り組んだ。こうして昭和48年に完成した再生壁画は、法隆寺金堂に納められた。実は焼けてしまった壁画も収蔵庫に収納してある。